風間-第二話 住まい探しの旅
宮崎に到着して3日目。マンスリーアパートの契約は今月まで。今日は住む場所を探すことにした。
駅前を歩いていると、派手な看板が目に入った。「南国不動産」。
「宮崎だからって名前が安直すぎねえか?」
思わず呟いてしまう。南国をイメージさせる鮮やかなオレンジと青の配色。パームツリーのイラストまで入っている。長崎でこんな不動産屋は見たことがない。
少し不安を覚えつつも「ここでいっか」と入っていくことにした。ドアを開けると、意外にも中は落ち着いた雰囲気だった。
「いらっしゃいませ!」
元気のいい声で出迎えてくれたのは、30代半ばくらいの男性だった。名札には「森本」とある。
「こんにちは。今日は物件を探しに来た」
「はじめまして!森本と申します。宮崎に来られたばかりですか?」
「ああ、転勤で一昨日来たばかりだ」
「そうですか!宮崎へようこそ!どんな物件をお探しですか?」
森本の人当たりの良さに、少し安心する。
「駅近くでワンルームマンションを借りたい」
そう条件を伝えると、森本は笑顔で頷いた。
「かしこまりました。予算やその他の条件はありますか?」
会話を重ねるうちに、森本は几帳面にメモを取りながら、いくつかの物件を紹介してくれた。それぞれの物件の写真を見せながら、詳細を説明してくれる。
「こちらは駅から徒歩5分の新築マンションです。日当たりが良くて、周辺も静かですよ」
写真から良さそうな物件だと伝わってくる。パンフレットも整理されていて、周辺情報もよく調べられている。スーパー、コンビニ、銀行、公園など、生活に必要な情報が詳細に記載されていた。
「実際に見てみませんか?今から案内できますよ」
森本の提案に乗り、その日は3件の物件を見て回ることにした。どれも駅から近く、内装もきれいで、日当たりも良い。絵に描いたような良い物件だった。
最初の物件は新築で清潔感があり、二つ目の物件は少し古いが広くて風通しが良く、三つ目の物件は眺めが良くて静かだった。どれも一長一短あるが、欠点と言えるほどのものではない。
「どうですか?気に入った物件はありましたか?」
森本の問いかけに、俺は少し考え込んだ。確かにどの物件も悪くない。条件も満たしている。でも、どうもすっきりしない。まだ宮崎に来たばかりで、街のことも分からない。もう少し時間をかけて考えたい気持ちがあった。
「いずれも良い物件だが、、、もう少し他の物件も見てみたい」
「もちろんです!他にも良い物件がありますよ。後日また案内しますね」
森本は快く了承してくれた。今日見た物件の資料を手に、アパートへ戻る道すがら、空を見上げた。宮崎の青い空は長崎とはどこか違う。
「住む場所が決まれば、次は車だな…」
明日からの仕事のことを考えながら、俺は歩を進めた。この新しい街で、新しい生活が始まろうとしている。